自然栽培について考える
近年の健康ブームなどもあり、自然栽培という言葉を耳にする機会も増えたのではないでしょうか。
この自然栽培というのは、自然と、そこに生きる生命による営みのサイクルを大切にし、働きを引出すことでより豊かなサイクルを実現するという考えのもと、生態系の乱れを生むと想定される農薬や化学肥料を極力使うことを控えた栽培法となっています。
自然栽培を行うことにより生態系の働きが充実しやすくなり、物質の循環機能が高まる他、より自然の状態に近い効能が発揮できるとされています。この栽培方法を行うにあたっては、自然由来の有機物を適切に利用すること・品種ごとに栽培に適した時期の管理などが必要になってくるといえるでしょう。
自然栽培の歴史は古く、昭和には提唱されていたようですが、元々は当時の日本の時代背景から考えられた農法とも言われています。
現代は戦争からの復興や高度経済成長という時代を超え、豊かになったはずの生活ですが、一方、自然と生活の隔たりというもの大きく感じるようになった人も多いのではないでしょうか。文明の発展とともに少なくない数の環境問題や、食に対しての不安も生まれています。生産量が重視され、農薬や添加物が使用されてきたことによる人体への影響は、アレルギー性疾患やアトピーといった慢性的な病として浮上しているとの考え方もあります。これからの未来を考えた時、自然と食糧と営みについてしっかりと考えを深めていく時期にあると言えるのが現代という時代なのかもしれません。
さてそもそもの「自然」というのは、本来は人の手が加えられていない状況のことを指しています。とはいえ野菜の栽培は人が関わらないことには実現できないものです。
そのため自然栽培は極力人工のものを避けつつ自然の力を適切に利用し、人の手で積極的にその働きをサポートする方法だと考えたほうが分かりやすいかもしれません。自然栽培における「自然」というのは、目に見える自然という意味だけではなく、その背景と言える仕組みや働きかけといった部分も含まれていると見るべきでしょう。
基本的な自然栽培の考え方としては「自然を尊重すること」が第一になります。自然界のバランスや仕組みの神秘を観察し、そこから学んでいくという姿勢が必要不可欠。人の都合に自然を無理やり合わせるのではなく、私たちの方が自然のサイクルに合わせていくことで、より豊かさをましていくというのが、自然栽培の基本的な構造です。
そのため植物や微生物・昆虫・動物などの自然のサイクルをまずしっかりと観察することから始めることや、「自然と人間」というスタンスではなく「自然の中の人間」であるという立ち位置を自覚し、そこで行うべき役割というものを考えていくことが重要なのではないでしょうか。