野菜販売・生産の現状をデータで見る
ここ最近、自宅で食事を取る機会が多くなったという声をよく耳にします。
宅配やテイクアウトへの需要も急増している他、自宅で食事を作るために使用する食材の購入量が増えた方も少なくないのではないでしょうか。
毎日の食事において欠かせない食材のひとつが野菜です。
そこで今回は、農林水産省が発表しているデータ(令和2年5月「野菜をめぐる情勢」)に基づき、皆様が普段購入している野菜にまつわる販売・生産の現状を見ていきたいと思います。
まずは平成29年現在、日本へ供給されている野菜のうち、国内で生産されているのはおよそ全体量の8割(およそ1250万トン)であり、残りの2割(およそ310万トン)が海外から輸入されている状態です。
日本国内で多く生産されている野菜としては、キャベツやだいこんやたまねぎが多くなります。日々の食卓に並ぶ機会がよく見られる野菜ばかりですね。
海外からの輸入野菜は、その半分以上が加工品となっています。例えばアメリカからのトマトのピューレやジュース、冷凍や缶詰のスイートコーン、にんじんのジュースなど。輸入野菜のうち、生鮮品は1/4程度となります。これには例えば中国からのたまねぎやにんじん、ニュージーランドからのかぼちゃなどが挙げられます。
なお野菜の生産量および作付面積自体は、ここしばらくは横ばいになっています。
ですが野菜を販売している農家の数は、平成17年の段階ではおよそ51万戸であったのに対し、平成27年現在ではおよそ37万戸と、ここ十年ほどで減少傾向にあります。これには近年では農業に携わる方の高齢化や減少が進んでいることも影響しているようです。
有効な対策が行われない限り、この傾向を変えるのは難しいかもしれません。
今度は重さではなく金額ベースでみてみましょう。
平成30年現在の日本の野菜産出額は、およそ2兆3千万円です。これは農業総産出額およそ9兆円のうち、1/4ほどを占める金額となります。
そして野菜の産出額のうち、最も大きな割合を占めるのはトマトの10%、続いていちごの8%となっています。量で言えば圧倒的に生産量が多いキャベツやだいこんやたまねぎも、産出額でいえばそれぞれ4%ずつ程度になります。
近年では高級志向と低価格志向の二極化が進んでいます。野菜においては安全を謳う有機野菜や、栄養価が高い高機能野菜といったブランド野菜も広がりつつあります。需要の変動などの要因で、今後の産出額の内訳が変わってくる可能性も十分にあるでしょう。
なおいちごは、一般的なスーパーや青果店では「果物」として扱われていますが、農林水産省の分類では野菜として扱われています。これは農林水産省の定義では「果樹=だいたい2年ほど栽培する木本植物および草本植物であり、果実が食用とされるもの」となっており、いちごはその定義からはずれるためです。他にも同じく一年生草本植物に分類されるすいかやメロンなども野菜として扱われています。
続いて、価格の形成についてみていきましょう。
平成29年のデータから推計した限りでは、野菜の卸売り価格の中で、農家をはじめ生産を行った方が受け取る収入はおよそ6割。出荷のための選別や荷造り、運送などにかかる費用がおよそ3割。そして卸売りにかかる手数料が1割。
近年では、輸送手段が発達したことから、例えば「北海道で作られたたまねぎが東京でも販売される」といったように、生産地と販売地が遠く離れているケースも少なくないことから、輸送費用はそれなりにかかります。一般的には、輸送先が遠いほど、配送先が多岐に渡るほど、輸送費が高くなる傾向にあるでしょう。
またネットを利用した直販のように、卸売りを通さない形での販売方法も増えています。この場合、卸売り手数料の割合がほぼ無いと言ってよいでしょう。
このような流れを受け、上記に上げたような価格の形成の割合がどのように変わるのか今後検証してみるのもよいかもしれません。
<参考サイト>
農林水産省ホームページ内 野菜をめぐる情勢(令和2年5月)
農林水産省ホームページ内 果樹とは